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◎本物?にせもの?◎

石を扱っていると、よく、「こんな石を持っているのですが、これって本物ですか?」と聞かれます。

この種の問いには、非常に困ってしまいます。

昔し、私の母が、父からもらった婚約指輪を私に見せて、「これって本物?」と聞いてきました。

それは、真っ赤に透き通った石でした。

私はその石をルーペで何十分もの間、眺めていました。

それは、その石そのものではなく、その石の中に映し出されている映像でした。(実際ではなく想像) 

当時、安月給の父が、どんな思いでこの指輪を買ったのか?

なぜ、この赤い石を選んだのか?

若かりし日の母が、これをもらった時の笑顔……。

み~んなこの石の中に入っていると思ったのです。

私には、その石が本物か偽物か?いくら位するのかは、どうでもよかったのです。

その石の価値より、人の思いの価値は何十倍も何百倍も大きいのです。

私は母に、「いい石やなぁ~。大切に持っときや~!!!」と伝えました。

父も母も、ニコニコとして嬉しそうにしていた事を思い出します。

宝石の鑑定士の学校に行っていた私は、その日以来、鑑定士になろうとは思わなくなりました。